catenary’s blog

かなり危険な位置に立ってジャズを聴く人。常識から外れた目線でジャズについて書いてるので、話半分に。

Kenny Dorham 好きなアルバム。好きな音楽。

  やっと念願のレコードを手に入れることができたので、ブログにまとめておこうと思う。Kenny Dorham のアルバムだ。

 

 Kenny Dorham の「Quiet Kenny」は人気盤ということもあってか、なかなか値段が高く手が出せない状態でいた。しかし今回、ジャケ割れのものが破格で売りに出されていたので、思い切って購入をしてみた。

 

 水色のジャケットで、トランペットに手をかけて優しそうな目で前方を見つめる男性。まさに「Quiet」と言った感じでとても好きなジャケットだ。内容もジャケットの雰囲気と同じで、落ち着いたバラード(しかも名曲揃い)が演奏されている。

 

 僕がこのレコードを知ったのはジャズ喫茶でコーヒーを飲んでいる時だった。

 その日、のんびりコーヒーを飲んでいると、聴いたことのある懐かしいメロディーが突然流れ始めた。僕はしばらくその曲に耳を傾けてからカウンターの方を振り返り、マスターを見た。マスターは笑顔で「これ、〇〇ちゃん好きでしょ。そこのおじいさんのリクエストだよ」と言った。

 

 そこのおじさん、というのはこの店の常連である年寄りのおじいさんのことで、ジャズをずっと聴いて来た人だ。先ほどまでミンガスやモンクといった癖の強い人のアルバムがかけられていたので、落ち着いたバラードをリクエストしたのだろう。

 

 「これ、とてもいい雰囲気ですね!」と笑顔で言うと、おじいさんもニコニコして頷いた。

 

 ふと僕はこのメロディーを何処かで聴いたことがある、しかも何度も聴いたことがある、と思った。

 

 首を2回ほどぐるぐる廻して考えているとすぐに思い出すことができた。

 

 Sonny Rollins の「Newk's Time」だ。いつだったか大阪のこぢんまりとしたジャズ喫茶でかかっていて、これまた感動したアルバムなのだ(実はこちらはまだ購入することができていない)

 

 Newk's Time ではソニーロリンズがバリバリとした音で吹きまくっていたので、第一印象は「すごいや、コレ」といった感じだった。そんなわけでNewk's Timeを本当に好きになるにはとても時間がかかったが、Quiet Kenny はすっと体に入って来るようなクリアな感じで一瞬で馴染めた。

 

 個人的にはNewk's Time と Quiet Kenny は2枚合わせて聴きたいなぁなどと思いながら、その日は店を後にした。

 

 

 さて、考えてみると僕は水色なジャケが好きなのかもしれない。今よく聴く好きなアルバムを思い出せるだけあげてみても、

 Quiet Kenny [Kenny Dorham]

 Newk's Time [Sonny Rollins]

 Taylor's Wailers [Art Taylor]

 Red in Blues Ville [Red Garland]

 The scene changes [Bud Powell]

 Toshiko [秋吉敏子]

 流氷 [日野元彦 カルテット]

 こんな感じだろうか?うん。どれも本当に大好きだ。

 

 

 

 最後にQuiet Kennyを聴きながら常連のおじいさんがポツンと言った言葉を紹介しておこうと思う。

 

「このレコードはね、ケニードーハムが「俺はマイルスとは違うんだ!」って言ったアルバムなんだ。君にはそんな風に聴こえてこないかい?」

 

 Quiet Kenny は1959年。同じ年に確かマイルスは超有名「Kind of Blue」を出したはずだ。確かこの頃は「Round about Midnight」や「Bags Groove」もあったかな、、、

 ケニードーハムには、誰もが知るマイルスのような超有名トランペッターというよりは、ジャズ好きだけが知っているひっそりとした感じの人というイメージがある。

 

 ビッチェズ・ブルーのようなアルバムを湖に投げ込み議論を起こすこともなければ、鋭い音を連発しながら大舞台の上で派手にパフォーマンスして周る事もなかった(と思う)

 

 そんな彼が、「俺は、マイルスとは違うんだぜ?」と思いながらトランペットを持っていたとしたら、それはまたとてもかっこいいじゃないか、なーんて思ってしまった。

 

 僕はこれから先もQuiet Kennyを聴き続けて行くと思う。さて、僕はこのアルバムをどのように感じていくのだろうか。