catenary’s blog

かなり危険な位置に立ってジャズを聴く人。常識から外れた目線でジャズについて書いてるので、話半分に。

キャノンボール

 

 キャノンボール・アダレイというサックスを吹く人がいた。彼はとても太っていて、それに体も大きかったから、彼が楽器を吹きまくっている様子を見ているとなんとも面白くて良い。 

 

 実は、僕はジャズを聴き始めたほとんど最初の日からキャノンボールを聴いている。初めてジャズ喫茶を訪れた時に聴いたのが彼のレコードだったからだ。

 

 僕はキャノンボール・アダレイのサックスが好きだ。彼のレコードに、「アダレイはライブなんかで聴き手の心をぐっと引き寄せるような何か魅力があるから、客は彼らの作り出す舞台上のパフォーマンスと一体化できる」みたいなことが書いてあったけれど(英語だったから帰国子女の友人に手伝ってもらって訳した)、本当にその通りだと思う。

 

 

 けれど、好きなサックス奏者は誰ですか?ときかれた時に「キャノンボール・アダレイです」と答えるのは僕にとって少し勇気のいることになった。嫌な顔をする人も一定数いるからだ。

 もちろんキャノンボールアダレイが苦手な人もいることは知っていた。まぁよくあることだからだ。全てのジャズのアーティストみんなが好きという人はなかなかいない。

 彼らの話を聞いてみると、確かにそうだなと思うこともあった。彼らは主にキャノンボール・アダレイという人間はあまりダークな感じの人じゃないというようなことを語った。

 誰かの言葉で「ジャズには深刻さが必要」というのがあったけれど、まさにその通りなのかもしれない。キャノンボールは確かにすごい人だけれど、聴いていてどこかゾクゾクするようなドス黒いものは感じられない。

 

 でも、たとえ彼の演奏にそんな魂の陰りのようなダークさがかけていたとしても、僕はキャノンボール・アダレイが大好きである。

 

 結局、僕は演奏の向こう側に彼の人間的な優しさや面白みを感じているのだと思う。

 そして、何より僕にとって長く聴いてきた彼を否定することはあまりにも辛い。